12月16日(土)午後、貸会議室オフィスゴコマチ(京都市)にて、民族文化研究会の第1回公開講座が開催された。
公開講座とは、会員の知見を深めるため、今年から開始された行事であり、新進気鋭の論者を招聘した講演会である(毎年1回を目途に開催する予定)。
今回の公開講座の講師は、日本近代史研究者として知られている、宮田昌明氏(京大文学博士、帝塚山大学非常勤講師)。「支那事変の背景・経過・戦略と戦闘実態」と題し、講演を行った。
宮田氏は、戦後日本の歴史認識が、左派歴史家の極端な「日本悪玉史観」に見られるように、極めて一面的な歴史観に支配されていたと批判し、これにかわる多面的な歴史観を標榜する。
そして、宮田氏は、こうした多面的な歴史観を確立するための作業の一環として、イデオロギーに囚われることなく、支那事変の実像を明らかにしようと試みる。このため、関係国(日中)の文献の照合など、実証的なアプローチが採用された。
こうした検討の結果として、これまで喧伝された「日本の帝国主義的侵略」とは異なる、支那事変の実態が浮き彫りになった。支那事変は、どちらか一方の悪意や陰謀によって引き起こされた戦争だとは言えない。
支那事変は、日中双方が、相手国への無理解や場当たり的な対応によって、武力衝突を早期に収拾できず、泥仕合の様相を呈した事件だった。従来の「日本悪玉史観」のように、どちらかを分かりやすい悪役に仕立てた、ステレオタイプの歴史観では、この事件を理解することはできない。
講演終了後の質疑応答も活発に行われ、今回の公開講座は非常に盛会だった。