書評

【新刊紹介】山本直人『亀井勝一郎――言葉は精神の脈搏である』(ミネルヴァ書房、令和5年)

一 本書の背景にある問題意識 弊会顧問である山本直人氏の新著『亀井勝一郎――言葉は精神の脈搏である』がミネルヴァ書房から刊行された。本書は、「ミネルヴァ日本評伝選」の一冊であり、文芸評論家・亀井勝一郎の生涯を辿っている。 亀井は、昭和戦前期の文…

【書評】東郷茂彦『「天皇」永続の研究――近現代における国体観と皇室論』(弘文堂、令和2年)

わが国の天皇制度は、古代から現代まで、連綿として続いてきた。世界の君主制の中でも、その歴史の古さは、比類無きものだと言える。 ここで、なぜ天皇制度は長く続いてきたのか、といった疑問が浮かぶだろう。また、どうすれば、これからも天皇制度を長く維…

【書評】西田彰一『躍動する「国体」 筧克彦の思想と活動』(ミネルヴァ書房、令和2年)

本書は、東京帝国大学で教鞭をとる法学者でありながら、古神道に傾倒し、独自の国体論を説くに至った、極めて特異な思想家である筧克彦〔明治5年(1872)~昭和36年(1961)〕の全体像の解明を企図した書である。 これまで、筧に対しては、その学問の展開や…

【新刊紹介】宮田顧問の新著『満洲事変——「侵略」論を超えて世界的視野から考える』刊行

当会の宮田昌明顧問の新著『満洲事変――「侵略」論を超えて世界的視野から考える』がPHP研究所から刊行された。 本書は、近代日本の歴史的展開を、権威主義的体制の確立とアジアに対する軍事的進出というステレオタイプのもとで理解する侵略史観を相対化し、…

【新刊紹介】金子顧問が一部執筆した『国家神道と国体論――宗教とナショナリズムの学際的研究』刊行

当会の金子宗徳顧問が一部執筆した藤田大誠編『国家神道と国体論――宗教とナショナリズムの学際的研究』が弘文堂から刊行された。 同書は、近代日本の宗教とナショナリズムに関わる重要な主題でありつつ、深い交渉をもたないまま、固有の文脈をもって別個に展…

【新刊紹介】小野副会長が一部執筆した『権藤成卿の君民共治論』刊行

当会の小野耕資副会長が一部執筆した権藤成卿研究会編『権藤成卿の君民共治論』が展転社から刊行された。同書では、近代主義の齎した閉塞状況を打開する手がかりとして、権藤成卿の思想が再考される。権藤の略伝、主著である『自治民範』『君民共治論』の一…

【書評】谷崎昭男『保田與重郎――吾ガ民族ノ永遠ヲ信ズル故二』(ミネルヴァ書房、平成29年)

本書は、ミネルヴァ日本評伝選のうちの一巻として執筆された、晩年の保田の謦咳に触れた著者による保田與重郎伝である。保田本人に「侍側」(これは、保田が好んだ表現である)した著者の手になる本書は、その丁寧で行き届いた叙述において、極めて優れた評…

【書評】川久保剛・星山京子・石川公彌子『方法としての国学』(北樹出版、平成28年)

本書は、いかにグローバル化の潮流と対峙し、ナショナリティを再確認するか、という伝統的な、しかし喫緊の課題を解決する糸口を、国学の系譜に求めた気鋭の日本思想史研究者たちの論考集である。こう説明すると、国学のイメージから想起される、きわめて常…

【書評】新保祐司『「海道東征」への道』(藤原書店、平成28年)

本書では、気鋭の文藝批評家である著者が、2005年から2016年まで、産経新聞の「正論」欄で執筆した時評が集成されている。音楽を糸口とした社会批評から、明治期の精神史をあつかった論説まで、多岐に渡る時評が全五部の構成で所収されているが、これらの時…