2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

定例研究会報告 明治典憲体制について

明治典憲体制とは、一般に、皇室典範と大日本帝国憲法が、ともに最高の形式的効力をもつ憲法体制のことをいう。明治典憲体制は、明治22年、あるいは明治40年に成立した。 明治22年は、大日本帝国憲法と皇室典範が制定された年である。憲法では国家の統治機構…

定例研究会報告 東西のナショナル・アイデンティティ探求の対照――谷省吾における国学とゲルマン学の比較研究を手がかりに

はじめに 日本とドイツは、双方ともに、十九世紀における政治的な近代国民国家の確立に先立ち、十七世紀・十八世紀における文化的な国民国家概念の形成を経験した。こうした文化的な国民国家概念の形成は、日本においては国学によって担われ、他方でドイツに…

【書評】新保祐司『「海道東征」への道』(藤原書店、平成28年)

本書では、気鋭の文藝批評家である著者が、2005年から2016年まで、産経新聞の「正論」欄で執筆した時評が集成されている。音楽を糸口とした社会批評から、明治期の精神史をあつかった論説まで、多岐に渡る時評が全五部の構成で所収されているが、これらの時…

投稿論文 アジア主義から世界主義へ――摸倣子・文化圏・同一性

トモサカ アキノリ アジアという地域区分には、なんら蓋然性はない。我々は全世界における民族(Ethnic groups)の連帯を優先するべきである。そして、過去と未来の共栄圏建設は、あらゆる点でそのように読み直されなければならない。つまり共栄圏は、アジア…

【コラム】イロニーとしての「日本」――「日本論」の氾濫を横目に

眼前の机上に、私が購読している「国民同胞」という、ある保守系の団体の機関紙が載っている。そこでの記事に、海外在住の日本人会社員の手記があった。論旨を掻い摘むと、海外で生活するには、祖国を心の支えにする必要がある、ということである。確かに、…

【コラム】アジア主義の陥穽を探る――世界南モンゴル会議結成大会に臨席して

先日は、参議院議員会館で挙行された世界南モンゴル会議結成大会に臨席した。ゴビ砂漠以北のモンゴル民族は独立を果たしたが、ゴビ砂漠以南のモンゴル民族は中国共産党の圧政下にある。今回は、こうした圧政に抵抗するため、南モンゴルの諸団体が糾合し、世…

定例研究会報告 ベトナム民族運動と「民族の権利」

1.「民族の権利」としての基本的人権 東遊運動最大の指導者ファン・ボイ・チャウは、次のように言う。 「けだしヴェトナム人の今日フランス人に要求するところは、土地の回復ではない。権利の回収でもない。いっさいの土地利権は、ただカトリック教フラン…

定例研究会報告 本居宣長の神道思想における「擬制」の概念――江戸儒学からの影響を踏まえて(第2回・完)

二 本居宣長の記紀研究の手法――実証主義と「神代」の再構築 記紀解釈において要点となるのが、「神代」をいかに解釈するかという問題だ。日本初の正史である「日本書紀」は、冒頭に天地・国土や神々の誕生と神々の物語を記す「神代」巻を置いている。それは…

定例研究会報告 本居宣長の神道思想における「擬制」の概念――江戸儒学からの影響を踏まえて(第1回)

はじめに 江戸儒学において特徴的な概念である「擬制」は、荻生徂徠の思想を端緒として見出される。徂徠は、もはや再現しえない古代中国の理想的秩序を、言語的習熟という手段によって、かりそめであれ作為的に構築しようと試みた。こうした「擬制」論は、朱…

ブログ巻頭言

このブログでは、活動の中心である定例研究会についての報告や、昨今の社会情勢を切り取った時論、そして感銘を受けた著作への感想をつづる書評など、会員の手による様々な随筆を掲載していく予定です。また、定例研究会をはじめとする当会の主宰する催事に…

当会の紹介

民族文化研究会は、早稲田大学によって「学生の会」として公認されている政治学術サークルである国策研究会のOBを中心として結成されました。国策研究会は、昭和19年の創設から、政治を中心とする諸学の研究を通して、会員の知見を深める活動を展開し、早稲…