里見岸雄『天皇とプロレタリア』輪読会の模様

 民族文化研究会関西地区定例研究会では、会員による研究報告と並行して、日本文化・日本思想についての古典的著作を対象とした輪読会を行っています。現在の輪読会のテキストとなっているのは、里見岸雄天皇とプロレタリア』(展転社、平成30年/原著は昭和4年)です。国体の科学的認識を志向する「国体科学」を提唱し、従来の国体論に新風を吹き込んだ著者の初期論考であり、同『国体に対する疑惑』(展転社、平成12年/原著は昭和3年)と共に洛陽の紙価を高らしめました。マルクス主義の台頭に国体論の立場から如何に応答するかという問題意識のもとで、天皇と無産階級が対立してこなかった本邦の歴史事情に照らし、資本主義=皇室制度という誤謬のもとで皇室擁護論と皇室廃止論を呼号する左右両翼を批判し、国体論への社会主義運動の取り込みまで展望する快作です。特に従来の神学的・観念的な国体論への批判は峻烈であり、著者の展開する「国体科学」への自負が窺えます。観念ではない実際の国民の社会生活構造のなかに国体認識の基礎を見出す著者の手法は、現代でも国体論のアプローチのひとつのモデルを提示していると言えるでしょう。こうした本書に関心をもち、関西近辺にお住まいの方は、どうか民族文化研究会関西地区定例研究会にお気軽にご参加ください。(関西支部事務担当・湯原)

 

(写真1 先日開催された民族文化研究会関西地区第4回定例研究会)

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(写真2 里見岸雄天皇とプロレタリア』書影)

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